The Future Circle

Akinoriderのブログ。主に音楽・映画・本など、サブカルチャー/カルチャーについての感想。

映画「モテキ」感想(前編?)

まず最初にひとこと
「面白いから、いいから観に行きなさい!!」

個人的にはこれから述べるように、特にラストに関して、言いたい事はある。
でも、水準以上の映画であることは間違いないと思うので、原作・ドラマファンの方はマスト!それ以外の方達にも、オススメです!

☆☆☆☆★(3.5点)


* * *

注意!ここからの内容はネタバレを含みます

* * *


じゃあ本題に行きましょう。


僕の感想はシンプルで

「面白かった!…でも!なんなんだあのラストは!全然納得出来ない!」

でした。


僕は2回観に行きましたが、初回は
「これ、夢オチ…?」
とすら思いました。
2回目観た時は、初回よりも冷静に観ることが出来、整理しながら観る事が出来ましたが、やはり違和感が残りました。


このラストに関してだけ言うと、結構賛否は分かれてる様です。
ちなみに初回僕は男3人で行きましたが、全員がラストに関しては否定的でした。
(なお鑑賞者のスペックは20代後半既婚者、20代前半彼女居ない暦数年、20代前半、童貞!w)


勿論絶賛してる方は多数で、僕の友人S氏も大絶賛です。
ちなみにS氏のブログにも素晴らしい感想が載ってるので是非ご参照を。

映画『モテキ』鑑賞記 ※【注意】セリフ引用で若干ネタバレします【ネタバレ】※ - Strongbow lives in …
映画『モテキ』鑑賞記 2 みゆきとるみ子を中心に【ネタバレ注意】 - Strongbow lives in …


で、この賛否が分かれる分岐点として挙げられるのは

「みゆきはそもそも幸世のことが好きなのか」
「このモテキが成就したことは、幸世にとって真のハッピーエンドなのか」

この2点だと思います。


1、みゆきは本当に幸世の事が好きなのか
そもそも僕の第一印象からすると、ラスト、何故みゆきが幸世を受け入れるのかが全然理解出来なかったです…。
だってあれ、彼氏の前で強制レイプ…じゃなく、強制キスですよ?例えば、泥水にダイブした時点で二人で笑いあって…とかならまだ分かる。
いやがってるのを無理矢理キスしてるうちに相手もいつしか舌を絡め…なんて、

どこのエロゲだよ!w

後はそもそもみゆきが幸世の事が好きだなんて一回もちゃんと表現されてないと思うんですよ。
例えば漫画だと、土井亜紀自身が幸世を好きだというのがはっきり描かれている。
今回そういうのはないですからね。
唯一示唆的なのが、みゆきの彼氏であるダイスケが心配するシーンのみだと思います。


またそういうみゆきの心情が説明不足な上、僕たちは既に今までの「モテキ」を経験したことにより、女性に対し疑心暗鬼になっているではないですか!ww
こいつは小宮山夏樹じゃないなのか?土井亜紀じゃないのか?と。
「この子は今までの誰とも違う」なんて幸世の説明も信用出来ないわけですww


まあこの辺のみゆきの心情に関しては前述のS氏のブログが詳しく解説してくれています。
映画『モテキ』鑑賞記 ※【注意】セリフ引用で若干ネタバレします【ネタバレ】※ - Strongbow lives in …

「ごめん…私、幸世君じゃ成長できない」

「何で追いかけてくるの?来ないでよ、ほっといてよ!幸世くんとじゃダメなんだって…会いたくなかった、幸世君と」


特にこの辺の台詞をどうとるかが重要なんでしょう。この解釈を念頭に2回目観た時はまあアリかなと思えるくらいにはなりましたw


また、彼氏との関係が、ラスト間際の彼氏からのある台詞をきっかけに変化します。この台詞と、みゆきのリアクションをどう捉えるかでも変わってくるでしょう。


いずれにせよ、前述したみゆきが幸世を受け入れる行動のタイミングの問題はリアリティを欠いているなと思います。




2、モテキが成就したことは、幸世にとって真のハッピーエンドなのか
もう一つの問題は、最後ハッピーエンドにしたいのに、観客にはそう読み取れない脚本だと思います。

まず「モテキ」の重要テーマの一つに、恋愛漫画と言うフォーマットに乗っかった成長物語という面があると僕は思います。
で、この主人公の幸世、ホントに成長しないwそして同じような失敗を繰り返す。
いや、いいんです、人間そんな簡単に成長しないし、人間は過ちを繰り返す生き物ですから。

成長しない主人公の物語、繰り返しの物語、といえば、連想するのはやはりエヴァンゲリオンです。
というか僕はこの「モテキ」、「エヴァ」との共通点が多い似た作品だと思っています。この点は詳しく後述します。


話を戻します。

そのような成長しない、過ちを繰り返す幸世の成長が唯一はっきりと示されるシーンがひとつあります。
ダイスケの取材記事を書き上げ、周りの人間に認められるシーンです。
この映画、最大のカタルシスがあるシーンでしょう。このシーンで幸世は「大人になる」のです。

しかし、このシーンで描かれた幸世の成長が、フェスシーンを舞台にしたラストで180度ひっくり返される。
これがこの映画最大のミスです。
女上司、唐木が「走れー」などと今までの態度を豹変させる点も全く理由がない。
せっかく周りに認められたものを放棄してまで手に入れたハッピーエンド…?では疑問を残す余地が大きいと思います。


では逆に考えてみましょう。もし、モテキの成就をハッピーエンドにしたいのであれば、少なくとも恋愛面で幸世の成長が明確でないと観客は共感しにくいでしょう。
実際には今回の幸世は成長しているとの主張はされています。
例えば、「今回は一途だ」とか「直接面と向かっている」「はっきり追いかけるという行動で示している」など。

ですが、実際考えてみてください。実際の恋愛でこれらの行動が果たして必ず「正解」でそのような行動を取ることが「成長」だと言い切れますか?あなたは。

これが「モテキ」の持つ構造的欠陥なのです。


実際の恋愛において「正解」など存在しません。
皆さん身にしみて解っているでしょう。だから恋愛は苦しく、そして面白いのです。

人間の社会的行動全般においては「正解」と言われる行動や、「成長」は分かりやすい形で示されることもありますが、パーソナルな人間同士の恋愛では分かりやすく示すことが難しくなります。

それをこの「モテキ」では明確なハッピーエンドに向かう物語を成立させる為に「追いかける」「一途」「メール、電話より直接会う」を正解にし、それを選ぶことが成長だと、記号的に決めつけざるをえないのです。
そしてその時点で、恋愛のもつ最大の魅力をスポイルしてしまっているのです。
これは恋愛映画として最大のミスではないでしょうか。
それならもうちょっとどっちとも取れるようなラストにするなどの方法があったと、僕は思います。





長々書きましたが、以上2点よりラストシーンは問題があると言わざるを得ないと思います。これは脚本の問題だと思います。狙った賛否両論ならともかく、あのラストシーンだけこれだけ賛否別れるというのは脚本が悪いということでしょう。


繰り返しますが、僕はラストを除けば本当に素晴らしい作品だと思っています。
他に色々批判されてる部分も、僕は問題ないと思っています。なので文句なしでオススメです!

ただ…いわゆる「モテキ」ブーム的なものには僕は危惧を感じています。
先ほど書いた「モテキ」の構造上の欠陥を認識できない人たちが、いわゆる「非モテ」のオナニーとして「モテキ」を消費していると感じます。
その辺の話と、前述した「エヴァ」との比較を続きで書ければいいと思ってます。…書ければww